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随伴多様体、巾零軌道

    $ G_{\Bbb R} $ は半単純 Lie 群 $ / {\Bbb R} $、行列群であって適当な複素化を持つ。 $ K_{\Bbb R} $ は極大コンパクト部分群、複素化を $ {\Bbb R} $ をつけないで書く。 $ {\frak g} = {\frak k} + {\frak s} $ は Cartan 分解。

  1. 既約 Harish-Chandra 加群 $ V $ の随伴多様体。中心の作用がスカラーであることから随伴多様体は巾零多様体に含まれる (Kostant's theorem)。各ベクトルが $ K_{\Bbb R} $ 有限であることからそれは $ {\frak s} $ に含まれる $ K $ 軌道の和になる。結局随伴多様体は $ {\Cal N}_{\frak s}/ K $ の部分集合である。

  2. $ {\Cal N}_{\frak s}/ K $ は有限集合(Kostant-Rallis)。したがって随伴多様体は有限個の $ K $ 巾零軌道からなる。

  3. 随伴多様体は一般に一つの軌道の閉包になっているとは限らない。

    例) $ SL(2, \R) $ の主系列表現の随伴多様体は巾零元全体で、最大次元の軌道が二つある。これを分離するためには離散系列表現の随伴多様体を考える必要がある。有限次元表現は $ \{ 0 \} $ に対応する(これは定義よりいつでもそう)。
    これに対して原始イデアルの随伴多様体は一つの巾零軌道の閉包になっている。ここで大きくものを言うのは原始イデアルの随伴多様体は巾零 $ G $-軌道の和であって、各巾零 $ G $ 軌道は偶数次元である(Kostant-Rallis)という事実である。

  4. 随伴多様体の次元が Gelfand-Kirillov 次元。$ V $ の定める原始イデアルを $ I $ と書く。$ I $ の随伴多様体の次元は $ V $ の随伴多様体の次元の丁度2倍。$ 2 Dim V = Dim I $

    $ I $ の随伴多様体は一つの $ G $-巾零軌道 $ {\Cal O} $ の閉包である。このとき $ {\Cal O} \cap {\Cal N}_{\frak s} $ は有限個の $ K $ 軌道にわかれ、それらはすべて元の軌道の半分の次元に等しい次元を持つ。$ V $ の随伴多様体の最大次元の軌道はそれらで尽きる(が、一般にはその一部になっている)。

  5. 太田君の論文で離散群($ {\Bbb Z}_2 $ の直積群?)が巾零軌道に働く。この作用は極小 $ K $ タイプへの離散群 $ R $-group の作用と同じようなものと思えるが、では極小 $ K $ タイプに対して何か巾零軌道が対応していると考えるべきなのだろうか? 柏原-Vergne の論文あり(昔のやつ)。